レモネのきみ

きみ(IF)の話を延々とする、全部嘘

2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

酒を飲めば幸せになれるだろうか、それとも跪いてお祈りをしようか

ああ、そうか、3番線に乗ってもいいし、4番線に乗ってもいいんだ。都内、多摩へ向かってもいいし、そうか、郡山へ行ってもいいんだ。どこへ行っても別にいいんだ。でも勇気がなくて、ぼくは今日も三駅先のショッピングモールで時間を潰すことにした。 どう…

きみがぼくを産みなおしてくれたらいいのに

決して心地良いとは言えない午睡から目覚めると、とうに綿の固くなったぬいぐるみはぼくの両腕の中にきちんと収まっていた。夕方だ。こんなことなら孕んでいたほうがましだったと、股の間から染み出す血がシーツを汚していくのを見る。 唯一好きな番組が終わ…

幽霊が冷えた青い手でぼくの胃を撫でたのかもしれなかった

スーパーマーケットの白く磨かれた床が照明を反射した、ありとあらゆるチョコレートが並べられた棚の前で、ぼくは弾けるような強い不快感を覚え、飲み物ばかり詰め込んだカゴをそこへ落とした。耐えられなかった。 ぼくには女の幽霊が憑いていた。彼女はぼく…

ぼくはただの灰色で、それ以上のものを持つことも失うこともできなかった

湾曲した四角いガラスの中で、淡いブルーが静かに、それでいて波打つように収まっている。それがどのくらいで尽きるのかはわからない。ずっと遠くであればいいと思う。 待つことが本当に難しい。得たいと思っているからだ。どうせ手に入らないなんて諦めたふ…

ごめん、今日はもう何もできない

あは、焦らなくていいよ。 電話したいと思った。今すぐ助けてほしいと本気で思っている。手が伸びる。どんなボタンを押してもつながるはずがなかった。ああ、痛いなあ。マスクを外した。雨に濡れた河川敷からは新しい匂いがしていた。 ショッピングモールの…

そうだよ、時が経てばすべてきみの思い通りになるよ

そういうところが嫌いなんだよ、そういうところが嫌だったんだよ。そういうところに呆れていたの。そういうところが嫌いなんだ。 大きな声でぶつけた言葉は、悲鳴らしく上ずって半分べそをかいているみたいに聞こえた。ぼくはそうやって泣くきみを見ていた。…

最寄駅の階段を上る瞬間、不安や恐怖はおかえりを言ってぼくの背中で調和を図る

赤ワイン、デカンタ、安っぽいグラスに貼りつく結露、ぐらぐらしだす頭、とまらないお喋り、ぼくのシャツを引っ張るきみ。とっくに氷が溶けてぬるくなった水、淡く好いたひと、その人の笑い皺、両手足の指を全部数えたって足りない歳の差。ぼくよりずっと苦…

コメントくーださい!

いつもありがとうございます。 もしコメントをしていただけるなら、すべてに返信しますので、よかったらお願いします。 嘘ばっかり書いていますが、今回はきちんと答えます。 そもそもコメントしづらい内容だとは思いますが、読んでくれている人がいるなら声…

警察署を追い出されたぼくを、白いペンキで塗られた門の外できみが待っている

便箋の枚数が六枚を超えていて、覗き込んでいたきみがあらあら、とでも言いたげに頭を揺らした。ぼくは便箋をかき集め、机にとんとんとぶつけて揃えると、それを真っ二つに裂き捨てた。こんなものを出すわけにはいかない。きみはそれが手段としてはっきりす…

なんで?どうして?という問いに誰かが答えをくれたらいいのに

タオルから大好きな人の匂いがする。香水の匂いだ。安心する匂い。その柔らかい胸に抱かれているような感覚さえある。乳房を掴んで顔をうずめたいと思う。当然それは叶わない。 自傷行為を繰り返して、その度に頭を掻き毟るほど泣いているけれど、今は穏やか…

今度こそきみの言葉を違えないからぼくを救ってほしい

きっとぼくは忘れるね。全部忘れて、ああそんなこともあったな、あの時は大変だった、一生懸命だったけど今はもう別のことで手一杯、懐かしいね、あんな風が吹いていたよね、ってきみに言うんだ。そうだよね。ぼくには肩を竦める癖があって、そう言った後も…

きみの穏やかな視線に包まれて久しぶりに安らかな気持ちでいた

ショッピングモールをふらふらと歩いていたとき、何か探し物のため留守にしていたきみはやっとぼくに追いついて、ぼくの背中に、一番愛しているよ、ずっと愛しているよと言った。きみが何を探しに行っていたのかは、それですぐわかった。ぼくを地面に括り付…

起きて、喪失感が蘇って、また苦しみの涙が流れたら

道端で、自転車のサドルの上で、フードコートの端っこの席で、くたびれたベッドの上で、ぼくの涙は止まらない。嗚咽、苦しみながら涙を絞り出して、過呼吸に近い息をする。きみはぼくに言葉をくれたのち、何かを探しに出て行ってしまった。 きみがぼくのこと…

君の焼けた肌を水が打ち、その冷たさが骨にまで伝わる頃

ほらね、きっと悪いことが起こると思った。これはぼくのせりふだ。きみはもう、ぼくを下手に慰めることすらしないみたいだ。 結局今日はくたくたになって帰ってきて、十九時以降の出来事は全部忘れてしまった。覚えているけれど、どれもこれも夢のように曖昧…

きみの頬に最後のキスを落とすことさえままならない

閃光が走るように全身がびりびりと打ち震えるようなときもある。思いがけない場所で、思いがけない人から賛辞をもらうときもあったかもしれない。ああ、ぼくは特別ではないけれど、力を尽くしてやるべきことがあるんだ、と、できるはずなんだと、確信したと…

自分がだめに思えて胸にナイフを突き立ててしまいたい

ぼくが若く死んだら、サテンに包んでバラのベッドに寝かせてほしい。 きみの言うことはわかるよ。ぼくはちょっと感情的になってぴりぴりしているみたいだ。普段ほとんど食べないスナック菓子もあっという間に空にして、枕に染みていくのも構わず濡れた髪を押…

それがわからない限り、ぼくに糸は垂れない

わかってないな、今日もぼくはわかってない。 リップクリームを塗らずにがさがさに乾燥した唇を爪でひっかいていたら、あっという間に口に血の味が広がった。歯磨きをしたばかりなのに。 あなたが死んだら、この骨をくれる?後頭部にある鶏冠みたいにとげと…

大きくて扱いきれない感情と衝動に任せた言葉

どうして呪術の真似事なんてしたんだろう。願いが本当に聞き入れられるとでも思っていたんだろうか。海辺に高く積まれたブロックの上で、十メートル手前にあったセブンティーンアイス自販機で買ったチョコミントを舐めた。足がぶらぶら、砂には届かず飛び降…

歌姫へ

数日前、あなたのニュースを聞いたとき、私は楽観視していたというか、全然リアルなこととして捉えられなくて、特別な感傷もなくそれを受け止めました。 今日あなたの死がはっきりと報じられてから、私はあなたの歌を聴きました。私は他の誰の歌よりもあなた…

skit(試作品)

※音流れます

ぼくは笑う、あざ笑う、何か勘違いをしているんじゃないの?

ちょっと笑っちゃうよね。笑ってしまう。あは、と間の抜けた息が漏れる。たぶん、呪いが成就したのだ。お願いだから不幸になってくれ、相対的にぼくを幸せにしてくれ、という全霊を傾けた呪いが、遠くて見えないどこかで叶ったのだ。じゃなきゃこんなに笑え…

書いた記事が60件を超えた

つまり三ヶ月は続けているってことだ。休んじゃえ、の日もあったけど、それなりに続けている。 読み返すと本当にこんなの書いたっけ? と思うことも多い。あーあ、こんな、どうしようもない独り言をつらつら書き並べて、なんの意味もないのに、公開している…

どんなに勘違いしても凡庸でしかないんじゃないか

満腹と満足は違うってテレビが言っていたけど、どうやったら満足できるのは教えてくれなかった。三日は連続して食べた冷凍食品の袋を捨てて、割り箸と紙コップも片付けた。きみはぐったりしているわりには、ぼくに話しかけようとしていた。転がる自転車の荷…

淡いピンク色に塗られた花びらみたいな爪が、臍の下を彷徨った

高校三年生の梅雨だった。私は学年四位の彼女に勉強を教わるべく、金曜日の夕方、泊まりの荷物を持って彼女の家に上がり込んでいた。彼女の母親は夜遅くまで働いていて、私たちはきゃあきゃあと騒ぎながら勉強をしたり、コンビニで買ってきた夕飯を食べたり…

音楽だろうが運動だろうがお菓子だろうが、煙草だろうがなんでもよかった

湿っている、ここ数週間は何もかも。胸ポケットにしまっておいた煙草だけはかろうじて乾いていた。一本口にくわえてブルーの百円ライターを取り出す。ゆっくり息を吸うとうまいこと火が付いた。かなり久しぶりだったから、吸えないのじゃないかと心配だった…

雀のひしゃげた頭が転がっていただけで気が動転してしまった

何かホラーゲームの動画を見ていて、主人公が仲間の死体に大層驚いて錯乱する描写があったのだけれど、ぼくは愚かにも他人の死体にそこまで心乱されるわけがないじゃないか、なんて思ったのだった。ところが、タイヤの空気を入れるために立ち寄ったサイクル…

何年も使っている傘をついにどこかに忘れてきてしまった

自傷行為を我慢して、たぶん何日も経っていないんだろうな。毎日そのことを考えているから、思い切ってやってしまったほうがいいんじゃないかと思えてきた。あと一ヶ月くらいで果たして強くなれるだろうか。 もっとも、待つのは二週間くらいだろう。何にもな…

ぼくが着飾るのはこの世でたった一人、あなたに見てもらうためだよ

トマトを三個、胡瓜を一本、黄パプリカを一個。 じゃがいもはあらかじめ加熱してあるやつを買っておいた。 かわいい、とてもかわいいね。何度でもあなたを写真に撮りたい。ぼくをあなたに見てもらいたい。ぼくが着飾るのはこの世でたった一人、あなたに見て…

そうだった、彼女の名前を思い出したんだった

どれでもいいとは言わないが、選択をただで見せようとは思わない。親しくしたいわけでもないが、言葉を遮られる謂れはない。無害な人間でいたいけれども、愚かなやつと思われるのはしゃくに触る。講釈を垂れるならぼく以外を選んでほしい。 痩せたい。すごく…

風船と一緒に眠ると違う世界にいけるんだって

恐ろしい夢を見た。起きてすぐ、それが夢だったことを確認したくて、スマートフォンでSNSを確認した。エアコンがつけっぱなしだったせいか、喉が渇いて枯れそうに痛む。もぞもぞと起き上がって、なんとか冷蔵庫までたどり着くと、冷えたキリンレモンがぼくを…