レモネのきみ

きみ(IF)の話を延々とする、全部嘘

警察署を追い出されたぼくを、白いペンキで塗られた門の外できみが待っている

便箋の枚数が六枚を超えていて、覗き込んでいたきみがあらあら、とでも言いたげに頭を揺らした。ぼくは便箋をかき集め、机にとんとんとぶつけて揃えると、それを真っ二つに裂き捨てた。こんなものを出すわけにはいかない。きみはそれが手段としてはっきりするよりは楽かもしれないねと言った。

 

煩わしい。そうだ、許せる夏みたいな煩わしさだ。胸元を汗が伝い、髪の毛を焼く日射が苦しくて、氷が浮いたグラスを呷ることでやっと季節というものを許せている。ぎりぎりだ。これ以上は無理だった。

 

警察署の前に立っていた巡査に殴りかかって制圧されたことがある。まず右手を取られ、地面にうつ伏せに押さえられ、左手を背中に回しなさいと言われた。狂ったように叫びながら足を振り回したり、巡査の制服を引きちぎろうともがいたが、左手を確保しますと宣言された後、一瞬で両手を絡め取られ、ぼくは制圧された。右頬にごつごつしたコンクリートが刺さった。両腕は指の一本すら動かせなかった。

 

ぼくはもう生きていないほうがいいんだろう。保護室の冷たい床に尻をつけて、それだけは信じられた。生きていないほうがいい。警官を何度も殴りつけようとして躱された拳は真っ赤になって血が滲んでいた。むき出しの腕にも擦り傷がたくさんついていた。傷が治らなければいいのに、こんな傷はすぐに消える。そうしたらまたぼくは、そのへんの交番で拳を上げる。迷惑をかけて、保護室の床に寝そべるのだ。

 

そのくらいしかできる気がしない。そのくらいしかぼくにはできない。痛いほうがいいし、おかしいほうが楽でいられる。楽にしてほしい。警察署を追い出されたぼくを、白いペンキで塗られた門の外できみが待っている。