レモネのきみ

きみ(IF)の話を延々とする、全部嘘

2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

天秤が狂っているのかぼくが悪事を働いたのか誰がわかるというんだ

二つを天秤にかける。天秤は傾く。ぼくは上に上がってしまったほうに人差し指を置いて力を込める。バランスは逆になって、ぼくは皿の表面にべったりと付いた脂ぎった指紋をハンカチで拭う。天秤が狂っているのか、ぼくが悪事を働いたのか、誰がわかるという…

たといレッドテグーになったとしても

動物にならなければならない。 違うな、ぼくはすでに動物だ。そうではなくて、人間でないふりをしなければならない。また嘘をつくのだ。嘘をつくのは得意だ。 マリコのことを思い出す。彼女をひどい目に遭わせるのはこれで三度目だ。彼女は愚かにもぼくを憎…

誰かがぼくの嘘を糾弾してくれやしないかと淡く期待している

たぶんこうやって座ってはいけない椅子に座って何回も読んだ本を開く。何回も読んでいるのに、ぼくは植物と動物を隔てる要素を覚えることができない。なんとなくは理解しているのに、まだ難しいよ。そしてぼくは業務用エレベーターの前から追い出される。 鯨…

繰り返し悪夢を見るんだ、夢の中では誰も助けてはくれない

ピンク色のアイスクリームを食べたらきっとすごくすごく元気になるよ。ああでも、減量中なんだった。こんなに気分がいいのに、手足は痺れて立ち上がるたびひどいめまいに襲われる。何が悪かったんだろう。 きいろい封筒、これはぼくが勇気を出した結果だ。な…

生活を投げ出そうだなんて考えたことは一度もないよ

ぼくはこんなにうまく生活できているのに、どうしてみんなわかってくれないんだろう。主治医は薬の処方を増やした。そのせいでぼくは一日中眠くなってしまった。雨が降っている。タイヤが水溜りに潜っていく音が聞こえる。 手のひらが裂けてしまったので、し…

置いて行ったことをきみは怒らなかった、たぶん悲しんだのだろう

爪が赤い。赤がこんなに強い色だなんて思わなかった。しなびた灰色の手の指先だけ大仰に鮮やかだ。 部屋は暑かった。数日ぶりに冷房をつけた。ごみ箱からは一週間前に捨てたキムチのパックのものであろう臭いが漂っていた。自分のベッドに転がってぬいぐるみ…

おじさんはぼくの弁明を止めて、夜間救急に電話をかけた

ぼくは失敗した。川沿いの道を選んだのがよくなかった。河嶋のお屋敷から近い公園でぼくは偶然にも見つかってしまった。そして広い家の品のいい客間で、ぼくは夜を明かした。 深夜、ぼくは弁明しようとした。汗と埃まみれで、顔はぐしゃぐしゃだった。暗い色…

彼らは長い眠りから目覚めてぼくを地獄へ連れて行こうとしている

もう彼らを幽霊と呼ぶことはできない。彼らは長い眠りから目覚めて、ぼくを地獄へ連れて行こうとしている。懐かしい場所であることは確かだ。 ねえ、でもそれは、混沌ではなかった? 苦しみが伴ったのではなかった? どうして今これ以上かわろうとするんだ?…

終わったことを蒸し返すのはぼくの得意技なんだけど

ほらね、思った通りになるよ。ぼくを揺らすものはないんだ。そんなものは全部殺してしまったから、ないんだよ。 それでどうする? 終わったことを蒸し返すのはぼくの得意技なんだけど、まだ続ける気力があるのかな。彼女のメールに返信して、マイセンの茶器…

明日、明後日、明々後日、ぼくはすばらしい三日間を過ごす

ここに記しておこう。ぼくは明日に怯えている。明日、ぼくは自分を傷つけることを許した。ぼくだってめいっぱい考えたのだ。考えた結果、それはよくないことだと判断した。けれど明日そのつもりでいる。何時にするかを決めあぐねている。 ああ、馬鹿だ。ぼく…