心臓は静かに遅いテンポでぼくときみの体を鳴らし続けている
ありがとう!
ねえ、また遊ぼうね。
ぼくのために泣いてね。
あれはビーツだったはずだよ。どっちでもいいか、紫色ならどちらでも。
黒髪の女の人を見かけたよ。ぼくに笑ってくれたんだ。ぼくが二十八歳だって言ったら、私は三十だよって教えてくれた。ぼくはどうしてあの時二十八歳だなんて言ったんだろう。彼女は車に向かった。ぼくは別の車の中で、両親みたいだけれど知らない人たちが、彼女をいずれ支えてあげたほうがいいわね、と話すのを聞いていた。
内臓に疾患があるんだ。モニターで見たから知っている。すべて緑色に映るんだよ。舌を押し下げられてぼくは吐きそうになったし、ナイフが沈んでひどく痛かった。誰かが言ったんだよ、ここを見ろって。モニターに映ったそこには、確かに白っぽく異常なものが見えていた。
雨の中二人の男は家族を失った。山の上のだだっ広い駐車場から歩いて帰らなければならない。彼らの家族だったはずの三人姉妹はキャンピングカーで山を下る。ぼくは土砂降りの中ゆっくりと歩くみじめな男を車の中から見遣る。もう彼らをピックアップしてくれそうな車はない。さようなら、さようなら。あの黒髪の女の人の父親だった人。
目覚めたぼくの脂汗をきみが拭いている。もう外が明るくない季節になってしまった。きみの頬の高いところだけが、街灯の薄い灯りを受けてぼんやりと光っている。きみは夕食の準備のためぼくを抱え起こす。心臓は静かに遅いテンポでぼくときみの体を鳴らし続けている。