レモネのきみ

きみ(IF)の話を延々とする、全部嘘

少なくとも九年間、お守りの役割を果たしてくれるはずなのだ

やっと天然石を見つけた。その石はオパールという名前だった。ガラスケースの中に、それは飾られていた。リングとかブレスレットとか、いろいろな形に加工されていたけれど、ぼくが欲しいのはネックレスだった。小さなダイヤモンドがついたやつとか、パールに挟まれたやつとか、そういうごてごてしたものじゃなく、まあるい小さなオパールだけがついているものがよかった。

 

ガラスケースの中で、ぼくが欲しいオパールはなんだかとても普通な顔をしていた。リングとか、ダイヤモンドと組み合わされた派手なやつとかは、乳白色の中にブルーやオレンジの光が煌めいていたのに、ぼくが欲しいネックレスだけ、すました顔でどんな角度からも乳白色だけを映していた。

 

だけど、店員のお姉さんの手でケースから取り出され、ぼくの首につけられたオパールは、たぶん他のどの石よりもぴかぴかと青い光を内に秘めていた。鎖骨のくぼみのあたりにしっかりとおさまったオパールは、まるで、私ってきれいなの、そう思うでしょう? とぼくに語りかけているみたいに見えた。きみと幽霊が両脇から鏡越しにぼくを覗き込んで、すごいねすごいねと喜んでいた。

 

人差し指の爪の八分の一くらいしかない小さな石なのに、そのネックレスは二万円もした。きみは買うことを強く勧めた。オパールはぼくを守ってくれる。少なくとも九年間、お守りの役割を果たしてくれるはずなのだと。ぼくは考えさせてと言って、その店を後にした。

 

ぼくは電車に乗って家に帰ろうとした。途中、降りてはいけない駅で立ち上がってしまったけれど、かろうじて降りなかった。立ち上がったことに、幽霊が怒っていた。幽霊はいつも怒っている。ぼくを許してくれない。

 

それで? あの、だからね、あれはきっと来週買うの。どうして来週なの? それはね、来週、私の首にあの細くてきらきらしたチェーンを回してくれる人に会うからだよ。これは内緒で、嘘なんだけどね。

 

ぼくは深夜の雀荘でたっぷりと受動喫煙をしながら、耳打ちしてきみに教えた。牌をかき混ぜる音に、幽霊がうっとりと目を細めた。