レモネのきみ

きみ(IF)の話を延々とする、全部嘘

ぼくが着飾るのはこの世でたった一人、あなたに見てもらうためだよ

トマトを三個、胡瓜を一本、黄パプリカを一個。

 

じゃがいもはあらかじめ加熱してあるやつを買っておいた。

 

かわいい、とてもかわいいね。何度でもあなたを写真に撮りたい。ぼくをあなたに見てもらいたい。ぼくが着飾るのはこの世でたった一人、あなたに見てもらうためだよ。あなたに会えないなら、いまこの瞬間は何の意味もないんだよ。きれいな色の服を着る意味も、ぴかぴか光るイヤリングをつける意味もない。ただ騙しているだけだ。

 

壁に貼った32枚の写真は、全部ベッドから見えるようにしてある。あなたを見つめて、あなたに見つめられながら眠る。ぼくは元気だよ。あなたは元気なの?

 

今日は日曜日だった。昼過ぎまで眠ったけど、まだ眠ってるような気分だ。深夜にはっきりと目が覚めるんだろう。あの人に会いに行ったとき、きみがともするとぼくよりも嬉しそうにぼくを眺めるから、ぼくは小説を閉じてきみとお喋りをしたんだった。きみはいつでもぼくがそわそわしつつも喜んでいる様子を見て安心してくれた。

 

トマトを二個冷凍した。今ぼくにできることは生きるのを放棄しないことだときみが言う。ぼくはきみの言う通り、今日もぼろ雑巾みたいな生活の中、少し包丁を持ったり、コンロを掃除したりした。許してほしい。あの人に会いたい。できない。明日のために水を飲む。明かりを消したいのに、あの人の顔が見えなくなるのが悲しくてできない。きみは薬とレモネードを用意する。