レモネのきみ

きみ(IF)の話を延々とする、全部嘘

そうだった、彼女の名前を思い出したんだった

どれでもいいとは言わないが、選択をただで見せようとは思わない。親しくしたいわけでもないが、言葉を遮られる謂れはない。無害な人間でいたいけれども、愚かなやつと思われるのはしゃくに触る。講釈を垂れるならぼく以外を選んでほしい。

 

痩せたい。すごくすごく軽くなりたい。風船で飛べるくらいやせっぽちになりたい。風邪をこじらせて死にかけてしまいたい。二万歩歩いたあとの足の裏のじわじわした痛みが原因であっさりと死んでみたい。夏の夜、重苦しい湿度の空気の中をひたすら歩いて、小鳥の心臓と見分けがつかないくらいに小刻みにばくばく拍動する内臓が、もしかしたらそのままどんな動物よりも速く鐘を打って果てに止まってしまいたい。

 

お祭りの遠くから聞こえる太鼓の音に気持ち悪いくらい頭と腹が揺さぶられて、訳もわからないうちに川を流れてもいい。熱帯夜だって、川の中なら少しは冷たいだろう。マヒネメケオニマナ、これは見世物だ。どうぞ楽しんでいって。

 

やりたいことがある、ときみに言うと、そのほうがいいねと返事が返ってくる。もっと楽に死にたい。それができないので、しばらくはきみを振り回しながら文章を書いたり、散歩をしたり、泣き崩れたりすることにする。そうだった、彼女の名前を思い出したんだった。マリコ、あなたを不幸にするけど許してほしい。