レモネのきみ

きみ(IF)の話を延々とする、全部嘘

風船と一緒に眠ると違う世界にいけるんだって

恐ろしい夢を見た。起きてすぐ、それが夢だったことを確認したくて、スマートフォンSNSを確認した。エアコンがつけっぱなしだったせいか、喉が渇いて枯れそうに痛む。もぞもぞと起き上がって、なんとか冷蔵庫までたどり着くと、冷えたキリンレモンがぼくを待っていた。

 

きみが夢に出てくれればいいのに、夢のキャストはどうでもいい人たちばかりで、さらに悪いことに嫌いな人間まで登場してくれた。感情までねじ曲げているのはどういうことだろう。

 

風船と一緒に眠ると違う世界にいけるんだって。別にもうここに戻ってくる必要もないし、今日は風船の紐を左手に括り付けて眠ることにする。昨日買ってきた風船はまだまだはちきれそうに膨らんでいるし、水色の紐はぼくの指にしっかりと絡んだ。おまけにこの風船はぴかぴか光る。今日一度も電気をつけていない部屋の中で青や赤に光る風船を見ていると、きみと旅した別の暗闇が想起されて、ぼくは静かに泣く羽目になった。

 

じゃあこれで終わりなんだね。ぼくたちは目を閉じて、この風船の漂う先にゆくんだね。明日の朝ごはんも、雨の中出かけるための靴も、買おうと思っていたカレールーも置いていくんだね。梅雨のじめじめした湿度の高いにおいとは永久にさよならなんだ。紐でぐるぐる巻きになったぼくの左手をきみが両手で覆ってくれたら、それが合図だ。ぼくはしっかりと目を閉じて、昨日も明日もない、どこでもないところに探検に行くことにする。