レモネのきみ

きみ(IF)の話を延々とする、全部嘘

ぼくにはどうしようもないことばかりだ

幸せか不幸せかと訊かれたら、きみなら何て答える?

ぼくはぼくのために幸せだと答えてしまうだろう。不幸の近くに人は集まらないから。別に不幸は悪いことではないのに、臆病なぼくは幸せだと答える。ぼくは幸せなんだ、だから誰もぼくを見捨てないでくれ。

 

世の中に平等なんてものを体現できる場所はないから、ぼくたちは不幸を目の当たりにすることになる。あれを見てよ。ぼくは震える。不幸は怖い。苦しみを見るのが怖い。きみはぼくの目を手のひらで隠そうとする。見なくていいはずだ。ぼくはこっち側の人間だ。熱くなろうとする眼球をきみの指が冷やす。

 

思い出さないで、忘れたほうがいいよ。ぼくにはどうしようもないことばかりだ。きみがぼくの手からスマートフォンを取り上げた。幸せだなんて言えるはずがない。ぼくは幸せでも不幸せでもない、ただぼくという状態を続けているだけだ。それが続くといい。幸せか不幸せかなんて訊かれないほうがいい。

 

どれだけ逃げても、行き着いた先のどこかで、ぼくはまた不幸に出会う気がする。誰もぼくに不幸を訴えないでくれ。ぼくには受け止められない。ぼくの目にこれだけの不幸が映るということは、やっぱり神様はいないってことなんだ。ぼくは今日もきみに手を引かれてよろよろと歩くだけのぼくだ。左手には重いかばんを引きずって、置いていけるものなら記憶ごと置いていきたい。