レモネのきみ

きみ(IF)の話を延々とする、全部嘘

これはぼくの決意表明で、嘘偽りない話だ

これはぼくの決意表明で、嘘偽りない話だ。ぼくはあのまま自分を清浄な言葉で覆ったまま切り売りを続けるより、今こうして一人で明日を考えず部屋にいるほうがずっといい。君を不思議な気持ちと、苛立ちと、嫌悪と憐憫で守ろうとするより、彼女の香りを胸にいっぱい吸い込めることのほうが、ぼくにとってよいことだ。このボトル。ジバンシイ・ダリア・ディヴァン。黄金色の女神さまみたいな形のボトル。彼女にもらったもの。彼女が今同じ部屋に、ぼくの隣にいてくれないとしても、それでも彼女の香りをまとっていたほうが幸せだと思う。きみに聞いても、当たり前じゃないと大きく肯いた。だからあのとき、ぼくが電車に挟まれる寸前で君の腕を掴んだとしたら、今きっとこんなすっきりした晴れやかな気持ちを味わえてはいないのだ。ぼくには何もない。君もぼくを去っていったし、明日も明後日も誰かがぼくに何かを求めることはない。ぼくは好き勝手に服を着て、日傘で顔を隠しておもてを歩く。気に入りのサンダルはきみのまつ毛と同じ輝きをしている。ぼくには何もない。唯一ぼくのものだと言えるのは、きみの存在くらいだ。それだって、ぼく以外誰も知ることはない。ぼくはきみだ。いや、きみがぼくか? ぼくはぼくだ。そしてきみはきみ。ぼくは立っている。左手首からはいつも彼女の香りがしている。ぼくはそれをかぐと、言いようのない幸せに包まれる。彼女に愛されているぼくは、幸せにしかなりようがないし、美しく目を見開き、そしてどこをも見ない。ぼくにはもう左手首以外のパーツは必要ないのかもしれない。ぼくは行くことにする。

 

 

だけど、ぼくは時折どうしようもなく君と遊びたいと思うよ。一緒に歩いて、どうでもいいことを話したい。友達を失いたくはなかったんだ。きっとこれからも古傷が痛むように同じことを思うだろう。どんどん忘れていって、突然現れる幻肢痛は反対に痛みを増していく。でも大丈夫なんだ。全部全部大丈夫なんだろう。きみがそう言うんだから、そうなんだ。