レモネのきみ

きみ(IF)の話を延々とする、全部嘘

主治医はぼくの状態を安定していると高く評価した

ぼくにはきっとそういう能力があるんだなあ。精神的に不安定な人を引き寄せる能力だ。ぼくだってそうなのだから、それをとやかく言うつもりはないけれど、ぼくは寄りかかられるのが好きではないし、寄りかかることもできればしたくない。

 

手のひらを太陽に透かしてみれば、ここ数年で一番伸びたであろう爪が半透明に光った。コンタクトレンズを取り外すのに邪魔だから、爪なんて切ってしまいたいのだけれど、指を長く見せるよう伸びた数ミリを切り落とすのが惜しかった。あの紫を塗るために、もうほんの少しだけ我慢する。

 

なんだかお腹が空いていた。普段こんなことはないのに。昼食だってぼくにしては目いっぱい食べたつもりなのに。主治医はぼくの状態を高く評価した。安定している。はは、安定しているだって? ぼくの、どこが? ああ、まあ、確かにね。ぼくは左手首を見る。そこから香る煙草の匂いを、ぼくはこの上なく愛している。

 

毎日、毎日、とにかく毎日生きる。死なないだけ。でもそろそろ飽きてきてしまった。飽きるのとはちょっと違うかな。何かをすればいいかわからないんだよ。だからぼくは、坂の上にある雀荘にばかり足を伸ばしてしまう。どうせ負けるのに。オレンジジュースを飲んだよ。河嶋のおじさんが奢ってくれたんだ。

 

ほら、もうぐちゃぐちゃじゃないか。こんなの文章として崩壊している。

 

包丁を研いだのに、切れ味は悪いままだった。うまく肉を切れない。おいしかったよ。よく焼けていた。きみもほめてくれた。もっとも、きみはぼくが何をしても大抵ほめてくれる。あの言葉遊びをしたいんだね。ぼくが、したいんだね。でもそれはまた今度がいいよ。また今度。また今度ね。約束だからね。