レモネのきみ

きみ(IF)の話を延々とする、全部嘘

生活を投げ出そうだなんて考えたことは一度もないよ

ぼくはこんなにうまく生活できているのに、どうしてみんなわかってくれないんだろう。主治医は薬の処方を増やした。そのせいでぼくは一日中眠くなってしまった。雨が降っている。タイヤが水溜りに潜っていく音が聞こえる。

 

手のひらが裂けてしまったので、しばらく料理ができない。傘をさしてコンビニへ行く。きみはとぼとぼと後をついてくる。プリンを手にとって、逡巡してから棚に戻す。今は筋トレを頑張っているところなんだった。もっとも、足を使うような運動は禁止されているから、ほとんどやっていないのだけど。

 

どんな気分? ぼくは今晴れ渡っているよ。あの夜からずっと気分がいいんだ。満足しているし、期待していないし、誰にも裏切られていない。河嶋の家からは特に連絡はないし、深入りしないでくれているのはありがたかった。深夜の診療代、ぼくはびた一文出していないのだけど、それもどうでもよかった。ぼくはいつだって今が一番いいよ。思い通りにいったんだもの。やりたいことができている。

 

買い物は苦手だ。何を食べたいのか、何を買ったらいいのかわからない。ぼくは三十分かけてチキンのサラダとパイナップルのパックを選び、店を出た。きみは少し安心しているように見えた。そうだよ、ぼくは生活を投げ出そうだなんて考えたことは一度もないよ。

 

今日は香水を胸につけた。香りに抱かれているような心地だ。深くて重い煙草の匂いがする。ぼくはお祈りを忘れていない。生きることは祈ることと同義で、ぼくは供物を捧げてお願いをする。お願いしたんだ、したんだよ。だからそれは叶えられるはずなんだ。