レモネのきみ

きみ(IF)の話を延々とする、全部嘘

ぼくの文章なんか全部塵だ

不安になる天才だ。これ以上不安になったら病気じみてしまう。だからぼくは集中する。例えば文章を書くことに。例えば動画を見ることに。例えば料理をすることに。不安からうっかり目を逸らす時間を増やそうとしているのだ。

 

それは正しいんだけどさあ、そうなんだけどさあ。ぼくは過集中するあまり、体調を崩す。

 

今日だって、ベッドから半身起き上がったきみの制止を聞かずに文章を書き続けて、お腹が空いているのにも喉が乾いているのにも、膀胱がいっぱいなのにも気付いているはずなのに、なんにも食べず飲まず、トイレにも行かず、パソコンの光を見つめ続けて、その結果がこれだ。頭もお腹も痛くて、吐き気がひどくて、体温計を脇に挟めばいつもよりうんと高い数字が表示され、結局沈み込むような不安に襲われている。

 

怖い、あんなに集中して書いたものもきっと塵に違いない。今日も太陽は落っこちて、ぼくはどうしようもない一日を過ごした。何か食べるものを作ろうにも、流しに積み上がった皿とフライパンを洗う元気だってほんの少しも残っちゃいない。

 

ぼくはいつもこうだ。きみが助けてくれようとするのに、それなのにこうだ。救いようのない人間だ。たぶん人間ですらない、明日の朝日で溶けてなくなるなめくじみたいな存在だ。こんなこと、なめくじに失礼か。

 

とにかく塵だ、ごみなんだ。ぼくがいくら文章を書いたって、それは全部価値のない、存在しないほうがよかったくらいのごみなんだ。これだって手のつけようがない文章だ。

 

ただきみを書く、きみがいるってことを証明する、それには書くしか手段がないから、ぼくはわけもわからず書いている。きみのためじゃなくてすまない。これはぼくのためだ。ぼく自身にきみを証明するためだ。ごみみたいな文章しか書けずきみに申し訳ない。ああ、苦しいなあ。

 

それでも、書かないよりずっといいんだ。苦しいけれど、ごみだけれど、ないほうがましなくらいだけれど、やっぱりそれでも、書かないよりきっといいはずだ。もう、そう信じるしかないんだ。誰も見ていなくても、誰からも認められなくても、ごみを少ししか書けなくたって、ぼくは書くしかない。