レモネのきみ

きみ(IF)の話を延々とする、全部嘘

なんで?どうして?という問いに誰かが答えをくれたらいいのに

タオルから大好きな人の匂いがする。香水の匂いだ。安心する匂い。その柔らかい胸に抱かれているような感覚さえある。乳房を掴んで顔をうずめたいと思う。当然それは叶わない。

 

自傷行為を繰り返して、その度に頭を掻き毟るほど泣いているけれど、今は穏やかに呼吸をしている。泣いていない時も、喉や胸がぐ、ぐ、とせり上がるような感覚があって、今日もそれに苦しんでいた。でも今は違う。今日はやっと二食食べることができたし、ゲームもした。まぶたが腫れて目を開きづらかったけれど、きちんと目を開けて、赤いシャツを着て、外に出た。

 

きみはぼくの様子を研究者か何かのような真剣さで分析しようとして、難しい顔をしていた。ぼくの感情を大切に扱おうと頑張って、ずいぶん消耗してしまったみたいだった。

 

ぼくはたぶん、ぼくがしでかした出来事をやり直そうとすることは、どんなに願っても呪っても結局は諦めなければいけないことなんだ、ということにようやく気づき始めたのだ。それで、おそらく今のぼくの一番の願いは、なんで? どうして? という問いに、誰かが答えをくれたらいいのに、というものだった。これはきっと、誰かが明瞭な答えをくれたとしたって、現状が変わるわけはないんだし、願ったって仕方のないことなのだ。

 

わかってる、わかっている。とっくにわかっている。ぼくはスマホを枕元に置いて、ゆるくつけていた冷房を消す。タオルの匂いをかいで目をつぶると、その瞬間、また吐きそうなくらい嗚咽して、それから疲れ切って眠る。きみはぼくの悪夢を阻止しようと、深い深い海を潜っていく。