レモネのきみ

きみ(IF)の話を延々とする、全部嘘

きみの頬に最後のキスを落とすことさえままならない

閃光が走るように全身がびりびりと打ち震えるようなときもある。思いがけない場所で、思いがけない人から賛辞をもらうときもあったかもしれない。ああ、ぼくは特別ではないけれど、力を尽くしてやるべきことがあるんだ、と、できるはずなんだと、確信したときもあった。でもぼくは今疲れていて、このまま目を閉じてしまいたい。夢見たなにかをここで諦めてしまいたい。

 

ごめん、確かにきみと約束したんだ。どんなに難しいことがあっても、打ちのめされても、どうにかこうにか目を開けていよう、いつかたどり着けるかもしれない遠くを見つめ続けよう、約束したのはちゃんと覚えている。わかっている。でももう勝ち目はないんだ。これ以上戦っても残るものはないんだ。架空の恋人でもいいからその胸に飛び込んでやわらかいベッドで眠って、そのまま動くのをやめてしまうことにしたんだ。きっと顔は見えないけれど、美しい人だよ。

 

ぼくは疲れてしまった、どうやっても腕は動かないし、きみの頬に最後のキスを落とすことさえままならないみたいだ。霧は深くて、もうぼくの顔を隠しているんだろう。最後まできみのベッドにいたかったけれど、ぼくはもうやめるんだ。未練がましく手だけは離すことができない。ぼくの背中から手を回す恋人に愛を囁くこともできず、中途半端にきみの夢を見る、ぼくに覚悟がないせいで、きっときみまで失うのだ。それでも、どうでもいい、もう眠ってしまうのだから。