レモネのきみ

きみ(IF)の話を延々とする、全部嘘

君の焼けた肌を水が打ち、その冷たさが骨にまで伝わる頃

ほらね、きっと悪いことが起こると思った。これはぼくのせりふだ。きみはもう、ぼくを下手に慰めることすらしないみたいだ。

 

結局今日はくたくたになって帰ってきて、十九時以降の出来事は全部忘れてしまった。覚えているけれど、どれもこれも夢のように曖昧だ。

 

今日は悪夢から始まった。吐き気がするほどの夢見の悪さから逃れたくていろいろと手を打ったつもりだったけれど、当然空回りで、ぼくは君に三行半を突きつけられている。ああ、もう突きつけられるのも過ぎ去ったことだ。今ここには何もない。

 

君はずっと、本当にずっと泣いていた。ぼくが泣かせたんだろう。君を追い詰めて、苦しめて、こんな結論を出させた。それでもぼくはどこか他人事で、君を引き止める言葉だって全然滑らかに出てはこないのだ。君には言えないけれど、きっと君がいなくても、ぼくは生きていける。君がいてもいなくても、ぼくは他の人と友人になるし、恋愛をする。ぼくは忘れるのが得意だから。

 

ただ、今度こそ忘れられなかったらどうしよう、と不安にはなる。君はぼくが特別だと言ったね。ぼくにとっても、君は特別だったよ。

 

さあ、自由におなり。君は悠々と海を揺蕩う魚になるんだ。君の焼けた肌を水が打ち、その冷たさが骨にまで伝わる頃、君はぼくから解放されて、どこまでもどこまでも泳げるようになるだろう。

 

ぼくはそうやって両手を広げて豊かさを与えると同時に、右の小指で呪いを植え付けるのを忘れなかった。君の中で呪いが根を張り、微かに痛み続けるように、ぼくの小さな呪いが君を離さず、いつまでもいつまでも殺し続けるように、そう願ってぼくは呪いの根っこの一端を手放した。