レモネのきみ

きみ(IF)の話を延々とする、全部嘘

どんなに勘違いしても凡庸でしかないんじゃないか

満腹と満足は違うってテレビが言っていたけど、どうやったら満足できるのは教えてくれなかった。三日は連続して食べた冷凍食品の袋を捨てて、割り箸と紙コップも片付けた。きみはぐったりしているわりには、ぼくに話しかけようとしていた。転がる自転車の荷物台に器用にまたがって、ぼくの進路に頭を悩ませている。

 

今日も懲りずに長風呂でのぼせてしまって、黒いパンツとTシャツをだらしなくつっかぶったまま、ぼくは冷蔵庫を開けた。庫内はぎゅうぎゅうに詰まっているようでぼくがほしいものなんて一つも入っていなかった。諦めなければいけない。ぼくは瓶のサイダーを手にとった。炭酸がきつくて口の中が痛くなるだろうけど、これくらいしか飲んでもいいと思えるものがなかった。

 

とてつもなく不安になって、明日をやめてしまいたくなっている。ぼくはあの向こうに行きたいのに、きみを連れて行きたいのに、どんなに勘違いしても凡庸でしかないんじゃないかと、だったらそれをみんなに見られる前に自ら放棄して明日をやめてしまいたい。

 

サイダーは勇気なんかくれるはずないし、才能だって落としてはくれない、何より瓶なんて捨てたくない。ねえわかってる? 小手先でごまかしているだけだよ。どうするの、この先。次なんてできると思ってるの? こういうときばかりきみはぼくの人生をぼくのものみたいに扱う。うるさい。大人しく片棒を担いでくれればいいんだ。そんなことを言わないでくれよ、ぼくが全部間違ってるみたいじゃないか。