創作物
この小さなワインバーを経営して六年になる。それなりに地元の客がつくようになった。一人でふらりとやってくる客が多い。リピート率はそこそこ。 カウンターには女が座っている。女は常連だ。毎月第二土曜日に女はこの店を訪れる。もう四年くらいの付き合い…
「愛していたんですか?」 「愛していたわ。最後には自分の手で縊り殺してやりたいほどにね」 女はキャメル・メンソール・ライトの箱を魔法のランプでも擦るかのように親指でごしごしと触り、やっと一本取り出して火をつけた。 「苦しみがいつ終わるかわから…
愛している、愛している、愛している、どう伝えたらいい? あなたにいつか出会いたいと思って、あなたにいつ見初められてもいいように着飾って生きてきたけれど、あなたがぼくを知ることはない。ぼくを認識することはないんだ。あなたを愛している、愛って何…
※音流れます