レモネのきみ

きみ(IF)の話を延々とする、全部嘘

死にたいから特に欲しいものはない、でも駅前のビジネスホテルには泊まりたい

死のうと思う。そのわりには、12月までに痩せると意気込んでダンベルを購入していたりする。たぶん数日後には死んでいると思う。ただ、一週間で食べ切る量のピクルスを漬けたりしている。

 

死にたいから特に欲しいものはない。でも、駅前のビジネスホテルには泊まりたいと思う。宿泊施設は好きだ。自宅と違って、風呂に入って眠る以外の選択肢がない。自分ではない手で整えられた清潔なベッド。効きすぎる空調。ビルの裏側に設置された無数の室外機を見せる窓辺。そっけないカーテン。部屋を真っ暗にして眠ることしかできない、それにひどくひどく安堵する。

 

明日には死んでしまいたいから、部屋に散らばった髪の毛を掃除機で吸うこともやめてしまった。汚いのはわかっているけれど、これからもっと汚くなるのだから、これでいい。きみを幽霊に預けて逝けば、きみも少しは許してくれるだろうか。だめか。

 

ぼくは電話なんてしたくない。ぼくは一人静かに夜の準備を進めたい。楽しそうな声なんて聞かせないでくれ。これ以上惨めな思いをしたくないのに。

 

左上、頭上から降ってきた大きな声に怯えて、今日はすでにパニックを起こしていたんだった。だからもう今日は終わりにしていいはずだ。スマホの文字盤を打つのもやめにしたい。きみも、誰も、ぼくの予測変換をリセットしてはくれなかった。どうして愛と祈りを聞き届けてくれないの? 雑念と恨みと、吐き気を催す執着ばかり、ぼくの面前で再生し続けるんだね。愛と祈り。愛と祈りがあるはずなのに。嘘ではない。

 

眼球の裏に、長い髪の毛が丸まって入り込んでしまっているのだ。そうでなければ、毎晩こんなに涙が流れるはずがない。