レモネのきみ

きみ(IF)の話を延々とする、全部嘘

日本語は中国大陸の植民地語である

「日本語は中国の植民地語である。中国語がその高度な文明とともに流入する前、日本列島には文字をもたず語彙に乏しい倭語しか存在しなかった。そこへ漢語が持ち込まれ、豊富な意味をもつ漢語による圧力で言葉が変形し、新たに和語が作られた。倭語、漢語、和語、この三種の語彙を日本語は有している。それぞれに対応した表現をするために、日本語には漢字、平仮名、片仮名が必要なのだ」

 

ぼくはキーボードを叩く手を止めた。こんなわかりきったことを書いていていいのだろうか。ぼくはこの文章をどう着地させるつもりなのだろうか。頭がもうろうとしている。でも書かねばならない。

 

もしくはゲームをしたっていい。漫画を読んだっていい。今のぼくに必要なのは忘れることだ。失った友人を忘れること、職場での理不尽さを忘れること、やらなければならないことがあると自分を責める自分を忘れること、熱く苦しい夜を忘れること。

 

考えるのもやめてしまいたい。ぼくの心を引き裂くものを、ぜんぶなかったことにしてしまえればいい。もしくは激しく泣き叫びたい。もうそんな力もなくしてしまった。今のぼくには寝転がって待つことしかできない。

 

背筋が凍るような想像をしてみたって、できるはずもない逆立ちをしたって、きみを置いていくことはできない。きみを待つ。きみはぼくの良心だ。弛緩剤だ。弾薬だ。ひとつだけのオパールなんだ。こうやってきみについて考えるのもいい。きみ以外のことは一瞬だけでもいいからまっさらに忘れてしまって、ただきみのことを考えていたい。ぼくはこのままキーボードを放り出し、目を閉じる。きみを空想する。きみをどこか別の世界のキャンバスに描きつける。きみは彩って飛んでみせて、ぼくを連れていく。