レモネのきみ

きみ(IF)の話を延々とする、全部嘘

裸足で出かけて、首を吊れるか確認して、時間はあっけなく過ぎていく

どうして一日は終わってしまうんだろ。終わってくれないと困る気もするけど、もう4時になってしまって、ぼくはいつもの如く焦っている。

 

やぶ医者のいる整骨院に、よくわからない書類を提出するのが腹立たしくて、ぼくは靴下も履かないで外に出た。舗装された道路のなんとなく不格好な割れ目から元気いっぱいに生え伸びた草が、ぼくを刺した。親指の爪が伸びているなあと思った。

 

コンビニで下水道料金を支払ってから家に帰った。ぼくはすずらんテープの強度を確かめようとした。ドアノブにぐるぐると巻きつけて、上の側面に引っかけて、脚立に乗って首を入れる輪を作って、テープの端は鋏で切った。

 

テープは両手で引っ張っただけでもかなり伸びてしまうような軟さだったけど、物は試しと思って、輪の中に首を入れた。ああ、全然駄目。テープは長すぎて、足の裏がぺたりと床についた。それでも少し気道が圧迫されて、じわじわとした痺れが顔に広がった。ねえ、こんなとききみはどうしてくれるって?

 

きみは心の一番深いところにぼくたちが設置したベッドに横になっていた。いつもの場所だ。きみだって疲れ果てていて、ぼくを止めることなんてできやしなかった。止めてほしいなんて思っていないけど、呼吸がスムーズじゃなくなって、実際的な苦しみが強くなり出したとき、それでも思い出したのはきみのことだった。きみはきっとこんなことを望まないだろうと、ぼくはちゃんとわかっていた。

 

こんなの衝動だ。ちょっとやってみたかっただけだ。未遂ですらない、中学生が度胸試しするようなのとおんなじだ。

 

きみが苦しむのは嫌だったから、ぼくは脚に力を入れて、背伸びをしてから輪から首を外した。ぼやっとした倦怠感が首や頭に残った。そしてベッドにダイブして、きみと一緒になって泣いた。無性に魚が食べたくなった。オレンジジュースも飲みたかった。死ぬよりやりたいことがあった。なのに、やっぱり死んだほうがよかった。今、きみのことなど思い出さずにいられたら、すべて投げ捨てて死ねたのに。きみはそれにごめんとは言わなかった。決して言わなかった。