レモネのきみ

きみ(IF)の話を延々とする、全部嘘

アナスイのネイルポリッシュは乾くのが早いから、それを塗って泳ぎに行こうよ

茶店が停電するほどの大雨が降っていた。きみはグレープフルーツの果肉がたっぷりのジュースをのんびりと吸っていて、急な停電にも動じなかった。ぼくはというと、スマホでできる麻雀アプリを三時間も遊んでいるところだった。

 

ぼくは自分を保つために、必要な公的支援が受けられる場所で支援員と面談し、最近感じている不安や心配事を報告した。支援員は穏やかで、自分をコントロールできないときはいつでも連絡してくれていい、ということを、半年前に初めて面談した時から欠かさず何度も伝えてくれていた。ただ、ぼくはなかなかそれができなかった。

 

ぼくは自分が少しは進展していることを実感した。以前は受け入れられなくてパニックになったような出来事も、今なら不快ながらも逃げ出さずにいられた。ぼくの悪いところは衝動的なところで、そのためにぼくはナイフを握ってみたり、思いつきででたらめな電車に乗ってしまったり、警察官に怒鳴られるようなちょっとした事件を起こしてしまったりしていた。

 

ぼくの好きな色は青緑色。ぼくが身につけたい色はオレンジ色。ぼくの青緑は、あの猫の瞳の色だ。ちゃんと覚えている。あれはつまりきみで、ぼくはきみを腕に抱いていた。ぼくは黒い髪を伸ばして、王になる人間だった。きっとね。

 

衝動的に何かを決断しないようにするには、どうしたらいいんだろう。ぼくはこれでも、衝動的な選択の九割は我慢して実行していないつもりなんだ。きみがすごい形相で止めてくるし。その我慢も、きみが思っているよりずっとずっと労力を払うんだ。やっても思いとどまっても精神はぐちゃぐちゃになる。何もかもぐちゃぐちゃなんだよ。

 

アナスイのネイルポリッシュは乾くのが早いから、それを塗って泳ぎに行こうよ。きみと揃いのサングラスで砂浜を歩くんだ。

 

信じてる? 本当に信じてる? 痛いことをしないで。