レモネのきみ

きみ(IF)の話を延々とする、全部嘘

男として女に性器を挿入したいという欲求

成り代わりたいのだ。すべて持っている、何もかも優れているように見えるからだ。

 

がっしりした大きなからだ、筋肉のつきやすい運動に特化したからだ、そしてなにより、他者のからだの中に自分の性器を挿れることが社会的に容認され、ともすると推奨されている立場に、嫉妬しているのだ。

 

結局のところ、私は自分の体を許せないのだろう。小さく弱く、男性器を持たず、社会的に女と生殖行為を行なうことが推奨されない、何をするにも長けていない肉体に、不能感を覚えている。これじゃだめなんだ。これじゃ思うように生きられないんだ。

 

初めて見た性的な夢を今でも覚えている。高校生のとき、夢の中で私は自分が男性であると信じきっていた。横たわる女性に跨り、髪や頬を撫で、その赤い唇にキスを落とし、乳房を両手で揺らし、私は彼女に目一杯愛撫を施した。そしていよいよ彼女の濡れた性器に挿入しようとして、自分の性器を少し扱こうとしたとき、私の手は下腹部の前で空を掻いた。無かったのだ。

 

焦りと絶望に目が覚めて、頭は痺れ、体は汗に濡れていた。私は男ではなかった。女に挿入できる性器は、もとより持っていなかった。

 

夢を見てから十年近くが経った。そろそろ自分を受容しなければいけないことはわかっている。今の自分で満足して、叶わない夢は忘れなければならない。そもそも、私はなぜ女に挿入したいのだろう。

 

きっと、向こう側に立ちたいのだ。女を犯してもよい、女の上で欲求に任せて腰を振ってもよい側に立ちたい。男より女のほうが劣っていると信じているからだ。劣った自分を許せないだけだ。

 

そうじゃないと誰が言ったって、私はその妄執に囚われている。解放されたいと願いながら、このまま自分を憎み続けて、あちら側への妬みを持ち続けている。許してくれ、許して欲しいのに、忘れたいのに、蔑まれた記憶が私を離してくれない。