梅酒の瓶なんかぼくに洗えるはずないのに
駐輪場が突然目の前に現れたようだった。こんなところに自転車がいっぱいあったのか、とびっくりした。
新しい職場で働き始めてもうすぐ二ヶ月になるけれど、ぼくもきみもそんなことにすら気付かなかった。
もしかしたら、それが目に入ったということは、ぼくの状態がよくなっているということかもしれない、ときみに言ったら、残念ながらそういうわけではないよ、とぼくの頬にしるされた塩水の跡をなぞった。
でももう、ぼくは電車の中でしゃがみ込むこともなくなったし、この前みたいに大きな声で叫んだりもしていないのだ。それは今日が金曜日だからというだけかもしれないけど、毎日ぼくは働いた。
電車から伸び放題の雑草の空き地と、うねった川が見えた。きみは緑が好きだから、ぼくの視線をスマホから車窓へ移そうとする。ぼくは酒を買って帰りたい。そう。