レモネのきみ

きみ(IF)の話を延々とする、全部嘘

その時間が過ぎるのを耐えるだけでも打ち勝ったと言えるのだ

もうしばらく耐えなければならない。しばらく耐えなければならない。時間を信じるしかないのだ。そこにただ居るだけでいい、その時間を過ごすだけでいい、何もしなくたって死にはしないし、何もしないなんてできるはずもない。

 

おかしい。眠くて仕方がない。きっとこの文章も夢のなかで書いている。だからおかしくても仕方ないのだ。まな板の上でナイフを振るう。神さまのための食事を作るのだ。ぼくの神さまは酸っぱいものが好きだから、冷蔵庫のレモン汁はすぐになくなってしまう。

 

いらっしゃいませ。メニューをご覧ください。

 

何もしていないなんて嘘だ。だからこんなに眠いのだ。シェフを呼んでほしい。ああ、シェフはぼくだった。あの高い帽子を頭に乗せて、半透明のぴったりしたゴム手袋をしている。きみは薬のタイミングだけは決して間違えない。ぼくが混沌へと足を滑らせがちなのは今でもキッチンだった。きみは気づいたんだねと言う。そう、気づいた。今日もぼくは気づいた。

 

おいしい?

 

唐辛子を入れすぎたかしら。赤いスープの中に沈むものを箸で引き上げてほしい。箸はそこらの木を削ったってできるわけがないのよ。具材は切れている? 画材は買ってきた? 今日も描いたんだね。できないのにやるの?

 

その時間が過ぎるのを耐えるだけでも、ぼくは打ち勝ったと言えるんだよ。ぼくは結局は打ち勝つんだから。そう言ったのは誰だったっけ?