レモネのきみ

きみ(IF)の話を延々とする、全部嘘

神さま、美味しいお食事をありがとうございます、大きくなるためなんでも食べます

その人があまりに美しく立っているので、ぼくは彼女が苦しみ続けていたことにずっと気づかなかった。そうだったんだ。そっか。彼女のことをこんなに愛しているだなんて言っておきながら、ぼくは核心を知りもしないで憧れていたんだ。

 

神さま、美味しいお食事をありがとうございます。大きくなるためなんでも食べます。……。さ、そこに赤ワインを注いでくれ。

 

きみのためにバラを盗んだ。花弁をエチルに浸けておいた。きみだけがぼくの内臓のうねりを知っていた。きみはひとつだけのオパールなんだ。柳が垂れるように、ぼくの上にきみの髪の毛が流れてゆく。星屑を散らした細い糸のカーテンだった。

 

卵を割らないで。アルコールをこれ以上飲まないで。じゃあ横になるから、ぼくを潰してくれ。花弁を飲ませてくれ。いい? もう泣くのを我慢するのも、楽しいふりをするのも、きみを掌で確かめるのも、起きてすぐ大丈夫だなんて言うのも、昨日までにしたい。

 

きみのためにアイビーを刈った。だから、ぼくの庭にはミントすら生えていない。墓石に選んだ大きな石は脆くて、二年経った今では雨に打たれて穴が空いた。写真は褪せた。歯磨き粉を買った。豚肉は腐ってしまった。

 

神さま、何を食べたい? 何を作ろうか? 明日、ぼくは祈ってから溺れるほどの酒を飲み、薬を飲んで眠ります。