レモネのきみ

きみ(IF)の話を延々とする、全部嘘

僕は君の手前、僕の欲求についてあまり語らなかった

僕は君の手前、僕の欲求についてあまり語らなかった。語ることはためらわれた。しかし今となってはそのくらいの自由は許されるだろう。あの日、君は訥々と君の欲求を語った。僕は神妙な顔をして聞いていた。僕に口はなかった。

 

ただ、今ならば言える、彼女を見てくれ。彼女の白い肌、そこから青緑色の血管が薄く浮き出るさま、唇を湿らせるときの微かな水音。わずかに水を含んだような焦茶色の長い髪、それが僕の肩口に触れるときの痺れるような感覚。匂い。皮脂と混ざって、どこから発せられているのか僕には見当もつかない、甘いパンを焼き上げている途中のようなやわらかな香り。彼女の素っ気ないスカートの向こうに彼女の腿を感じる。僕の肉、僕のスラックス生地、彼女のスカート生地、彼女の肉。果てしなく遠いように思われて、僕は、僕の耳に口を寄せる(そう、そして彼女がその桃色の淫らなーー僕がそう思ってしまっているだけーー唇で僕に発信しているのは君への伝言なのだ。あまりにもひどい仕打ちだ)彼女から必死の思いで離れた。

 

安心してほしい、君への伝言は一から百まで、僕の頭の中に刷り込まれている。これが僕の役割だ、わかっている。君だけに伝えるから、どうか最後まで聞いてくれ。