レモネのきみ

きみ(IF)の話を延々とする、全部嘘

スーパーの床に寝っ転がって泣き喚きたいのに

きみが背中にくっついている。閉店前のスーパーは、レジの周辺だけさわさわと混雑していて、チーズとか、キムチとか置いてある一画には全然人がいなかった。

 

だからぼくは白く清掃されたタイルに寝転がって大声で泣き叫びたくて、左手にかけていたかごを床へと落とした。プラスチックがガチャと大きく鳴った。きみは何も言わないで、僕の頬を流れるあれを静かに見ていた。かごの中で眠るまいたけのパックが切なそうな色をしていた。

 

結局ぼくは灰色のかごをもう一度手にとって、右手できみの手を引いた。スニーカーの底が擦れてきみにしか聞こえない悲鳴を上げていた。セルフレジの銀色の台に、もうぼくの涙が落っこちることはなかった。きみはぼくのポケットから器用にタオルを取り出して、それを眼底に向かって押し込もうとしていた。無言、無言で、内臓が雑巾絞りされているみたいな痛みを胸や腹、こめかみに感じて、ぼくはもう目を開けていられなかった。

 

目を閉じている間に会計は終わっていた。かごをかご置きに戻して、少し口元を歪ませた君を、まだ乾きそうもない瞳の上の薄膜越しに確かめて、ぼくは家に帰ることにした。冷たくて硬い床に背中や肩の骨を打ち付けたいという願望は果たされなかったけれど、今日もやっと、やっとの思いできみと家に帰ることができるので、そう、それで、それで満足しなければならない。