鮮やかだったのを覚えている?
もうずいぶん楽しくない気がする。楽しいのかもしれないけれど、幸せではないのは確かだった。
ぼくは愚かだった。幸せになれと背中を押されているのに、幸せに身を置くことができなかった。
きみはそんなぼくをどう見ていたんだろう。
ぼくが最後に幸せだったのは一月だ。
きみも一緒だった。二人で、心のつっかえを感じながらも、幸せじゃないかと確かめあったよい日だった。
鮮やかだった。目にうつる、旗も、丸みを帯びた造形物も、人々も、何もかもが鮮やかで、ぼくはきみのことさえ忘れて泣いていたんだった。ああ、こういうものだった、ぼくが幸せを感じるのは、こういうものを見る時だった。そしてぼくが幸せな時、きみも幸せだった。だから一緒にいるんだった、単純なことだ。
緩く握った左手が、ぼくを軽く引いた。