痛みと熱ってほとんど同じだね、平気だよときみは言う
大丈夫。大丈夫って、もう、そろそろ頃合いなんだ。
熱いね。とてもあつい。てのひら、そう、なぞって文字を書いてよ。大丈夫?って書いたね。ほら、そういうこと言う。
体温計の銀色に、瞳が歪んで映っている。きみはそれを取り上げて、ぼくの腋に差し込んだ。冷たくて気持ちが良いのは一瞬だった。待っている間、ぼくたちは見つめ合う。
ピピピと鳴った瞬間にきみは目を閉じた。まつげが美しいとぼくは素直に思った。青緑。白。ああ、37.6℃。
きみはカーテンを閉めて、ぼくを寝かしつけようとする。暗い部屋で、ぼくは苦しいよ、苦しいよ、ともがく。じたばたと振り上げた腕を、きみは優しく抱きとめてくれる。
熱。あつい、白い体温計のまあるいフォルムを、幾何学模様のじゅうたんに落としたまま、眠れずに、ぼくはきみといる。きみと、このまま、きみと、止められないまま、止まろうなんて思わない。どこへ行こう。きみと熱をどこへもって行こう。