レモネのきみ

きみ(IF)の話を延々とする、全部嘘

セックスしていると、きみはぼくを見たり、不本意ながらも気持ちよさそうにしたり、痛そうに顔を歪める

ぼくは時々セックスをする。もちろん相手はきみではないけど、三人でセックスに臨んでいるような気分になる。

 

ぼくは気持ちがよくて、ああとかううとか声を出す。きみはぼくを見て、ある時は額を撫でてくれる。それから一緒に横になって、ぼくの快感や痛みに共鳴する。珍しく髪を乱して荒く息をするきみが愛おしくて、そしてこんなことに付き合わせてしまっていることがやっぱり申し訳なくて、ぼくはきみに手を伸ばそうとする。

その手はぼくにからだを埋め込んでいる相手に絡めとられて、きみに届くことは、あんまりない。

 

全部が終わって、一人になったぼくを、きみはまた見つめる。

ぼくは不安になって、こんなぼくはもう嫌?と訊こうとするけれど、かぶせるようにきみはそんなわけないでしょう、と笑う。スピリチュアルなんて信じない。

 

きみのことは信じている。その度に鼻の奥がつんとする。

熱かった。他人の身体も、きみが首を振った拍子にするりと伸びてきた髪の毛先も、ぼくには熱かった。だからといって冷たい何かをからだに入れたいわけではないよ。

 

ぼくはちょっと驚いてしまった、きみがぼくのしていることを受け入れはじめたから。それでいいよと。そう、そうなんだよ、ぼくは、人間で、生き物で、どうぶつだ。昔はそれが悲しかったけれど、ぼくたちの変化する特質自体は嫌いではないんだ、だからきみも変化したんだろう。愛だけ変わらず。夜明け前の不安の一等つよいとき、きみだけが変わらずぼくを抱いている。