どんなことでも一人でできるよ
今日自分がやってのけたことなんか全部忘れて、いいんだ、もうぼくは今日のお夕飯のことだけ考えていればいいんだ、ぼくはもう解放されたんだ、太陽がぼくを差さないことにだって気づかなくていい、そしてぼくはやっときみを思い出す。
きみはたぶん、ぼくの隣でぼくの手を握っていた。きみはたぶん、ぼくの背を摩って力んだ肩を下させようとしていた。きみはたぶん、ぼくを楽にさせようとできるだけ横にさせようとしていた。きみはたぶん、ぼくを愛している。ぼくがきみを愛しているよりずっと広い温かさと冷たさで、きみはたぶんぼくを愛している。
夕飯は決まっているの?っていう、きみの声でぼくは我にかえる。
そしてぼくは二人であったことを思い出す。途端、涙が溢れでる。
夕飯なんて決まってないよ、……!とぼくは叫ぶ。そんなの嘘だよときみは言って、ぼくたちの部屋の一角を指差す。涙を拭う。ぼくはきみなしでは生きていけないのに、一番苦しい部分を一人でやってしまう。そうだねときみが言う。ごめんなさいと謝って、ぼくは泣くしかない。今日の何もかもをやり直したい。きみと二人だ。